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LPS研究紹介

マクロファージと糖脂質の最近の話題(35)

ヒトiPS由来ミクログリア(iPSMG)を用いてヒト型マイクログリア細胞を持つマウスができた。

 マクロファージと糖脂質の最近の話題(35)で私どものLPSの経口投与で糖尿病性の認知症が予防できる事を紹介し、この機構に脳のマクロファージであるマイクログリアが不可欠な役割を果たしている事を紹介しました。実は、現在マイクログリアに大きな注目が集まっているのです。

 マイクログリアは、脳に常在しています。そして神経細胞の発達、恒常性維持機能、神経変性疾患などにおいて重要な役割を果たしている事が明らかになってきています。

 ところでヒトのマイクログリアは、マウスのマイクログリアとは比較的異なる事が知られていますが、ヒトのマイクログリアに関する研究のほとんどはインビトロで行われており、インビボ条件下でのヒトのマイクログリアの特性を正確に表しているとは必ずしも言えない状況です。

 この点に関して山梨大学医学部薬理学、GLIAセンター 小泉修一教授らのグループは、マイクログリアを完全非侵襲的に脳に移植して新しいマイクログリアと入れ替える経鼻移植法を開発しました。そしてヒトiPS細胞から効率良くマイクログリア(iPSMG)を作る方法を開発し、このiPSMGを用い、この技術を使ってマウス脳内に移植する事で、マイクログリアがヒト細胞に置き替わったヒト化マウスの作製に成功しました。

Transnasal transplantation of human induced pluripotent stem cell-derived microglia to the brain of immunocompetent mice. Bijay Parajuli#, Hiroski Saito#, Youichi Shinozaki, Eiji Shigetomi, Hiroto Miwa, Sosuke Yoneda, Miki Tanimura, Shigeki Omachi, Toshiyuki Asaki, Koji Takahashi, Masahide Fujita, Kinichi Nakashima, Schuichi Koizumi Glia. 2021;69:2332–2348. 10.1002/glia.23985

 著者らは、本研究によりマイクログリアが関係する種々の脳疾患、老化の仕組みがヒトマイクログリアを使ったin vivo研究(生体と同様環境下での研究)によって明らかになる事、さらにはマイクログリア移植による新しい「細胞治療法」が開発される事が期待されます、としています。先にも触れましたがマイクログリアは疾患の超早期、また老化の初期段階で環境変化を感知・反応する細胞で、様々な疾患の発症や進行、さらに私たちが報告したようにエイジングによる脳機能低下に大きく関係するとして非常に注目されています。ですから今後ヒトのマイクログリアの機能をインビボで研究するうえでは注目される技術であるといえます。

 一方で論文でも指摘されるように、マイクログリア以外の細胞はマウス由来の細胞ですから、このヒト化マウスでヒトのマイクログリアの機能が本当に調べられるのかなどの点については、さらに研究を重ねる必要があると考えられます。

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