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LPS研究紹介

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マクロファージと糖脂質の最近の話題(6)

腸管の蠕動運動は腸管を取り巻く筋肉に存在するマクロファージにより制御されている

マクロファージは全身のあらゆる組織・器官に存在して、組織の恒常性の維持や感染防御や組織修復に必須の働きをしています。

これらのマクロファージは包括的に組織マクロファージと呼ばれます。腸管には少なくとも2種類の組織マクロファージが存在しています。ひとつは、腸管の内腔に近い腸管粘膜下に存在する腸管マクロファージ、もうひとつは、腸管を取り巻く筋肉に存在する筋肉マクロファージです。

腸管は第二の脳と言われるように、消化・吸収だけでなく全身の健康(恒常性)を維持する上で重要な位置づけを持っていることが近年次第に明らかになってきました。そのような中で、腸管の筋肉マクロファージの生理的な働きに関しては殆ど明らかになっていませんでした。この筋肉マクロファージの機能について以下の論文で紹介されています。

Paul Andrew Muller et al. Cell 158, 300-313, July 17, 2014.

論文では、腸管の筋肉マクロファージが、腸管神経を介して腸管筋肉に働きかけ、腸管の蠕動運動を制御するという新しい機能を紹介しています。この仕組みは極めて巧妙で、腸管内容物、LPSなどが、腸管神経に働いて、腸管神経細胞がマクロファージを活性化するサイトカインを分泌する。そして活性化された腸管マクロファージはBMP2(従来は骨形成を促進するサイトカインとして知られています)を分泌して腸管神経を刺激し、その結果腸管の筋肉が収縮するというものです。そして腸管筋肉のマクロファージの活性を抑制すると確かに腸管の蠕動運動の異常が起こることも示されています。

また、腸管に存在するLPSがこの筋肉マクロファージの働きに重要な役割を果たしていることも示されています。例えば、抗生物質を投与したマウスや無菌マウスでは腸管の蠕動運動が障害されること、そしてこの障害はLPSの経口投与によって回復することなどです。

この論文から見えるマクロファージの機能を図式的に書けば、腸内細菌(LPS)→腸管神経細胞→サイトカイン(M-CSF)分泌→腸管筋肉マクロファージ活性化→サイトカイン(BMP2)分泌→腸管神経細胞活性化→腸管筋肉の運動、ということになり、LPSが腸管の運動に関して必須な役割を担うと共に、腸管筋肉マクロファージが蠕動運動を制御することがよく分かります。著者らはこのようなネットワークが腸管の運動性を制御しているとして、過敏性大腸炎などの治療にも有用な知見ではないかと述べています。

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