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LPS研究紹介

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マクロファージと糖脂質の最近の話題(23)

腸内細菌は腸管マクロファージの恒常性を維持する上で必須である

マクロファージの発生や分化、生理的役割に関する研究はT細胞などの解析に比べて随分遅れています。

この理由の一つはマクロファージは極めて多彩な機能を持っていることや体中のどこにでも存在する普遍的な細胞であるので研究対象とする場合に焦点を絞りにくいという点にあると考えられます。それでも近年マクロファージの研究は少しずつ進展を見せ、組織マクロファージの起源はこれまで考えられていた血中単球由来だけではなく胎児期の卵黄嚢に 由来するとする知見が発表されました。そうすると組織マクロファージは卵黄嚢由来と血中単球由来の両者が特定の組織でバランスよく存在して生理的な働きをしていることになります。すなわち組織マクロファージの機能を考えると組織ごとにきちんと制御されておりその意味でマクロファージの恒常性が維持されています。

組織マクロファージは体中のあらゆる組織・臓器に存在しており特有の機能を持ちます。この中で特に近年注目されている組織マクロファージの一つが腸管マクロファージです。

腸管マクロファージは個体の中でマクロファージ最大のプールとなっている他、腸管の恒常性維持に重要な免疫細胞です。その主な機能は死細胞の貪食と除去、腸管粘膜上皮に存在するクリプトでの細胞増殖の指示、神経免疫相互作用、殺菌活性などがあります。ですから腸管マクロファージの異常は炎症性腸疾患や大腸がんなどとの関連性があるとも指摘されており、その恒常性がどのように制御されているかは病態を理解する上で大きな手掛かりを与えると期待されます。

この点に関して、Tovah N. Shaw1らがJ. Exp. Med. Published on line: May 22, 2018/ Supp info:http://doi.org/10.1084/-jem.20180019
で報告しています。

著者らは腸管マクロファージの起源と密接に関係を持つマーカー(指標)を新たに見つけています。そしてこの指標を用いて腸管マクロファージを解析しています。

ところで腸管マクロファージはこれまで全てが血中単球由来とされてきました。この点についてはほかの組織マクロファージ(脳のマイクログリアや肺胞マクロファージなど)とは際立った違いと考えられてきました。著者らは以上の点に関して腸管マクロファージもやはり他の組織マクロファージと同様、卵黄嚢由来と血中単球由来の少なくとも3種類が共存して存在することを初めて示しました。卵黄嚢に由来するマクロファージは血中単球 由来のマクロファージとは性質や機能が異なると考えられますから、今後この違いに着目した研究が進むことが期待されます。また、これら3種の腸管マクロファージが機能的に成熟する(腸管マクロファージの恒常性維持)には腸内細菌が必須であるとしています。

さて経口投与したLPSの主要な標的は粘膜下の組織マクロファージです。腸管マクロファージの性格が究明されることは経口投与のLPSの効果発現メカニズムを考えるうえでも重要に違いありません。

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