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マクロファージと糖脂質の最近の話題(29)

SARS-CoV-2(今話題となっているコロナ感染症のウイルス)はインフルエンザウイルスと比較してサイトカインストームを起こしにくいかもしれない。

このところ新しいタイプのコロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染すると最悪の場合には免疫反応が異常に亢進する結果、普段は生体の機能調節や感染防御に重要な働きを示す、生理活性物質のサイトカイン群が制御されなくなってしまい、血栓を生じさせたり、高熱が出たりするなど生命に関わるサイトカインストームと呼ばれる現象を引き起こすことが指摘されています。

このサイトカインストームは感染が深刻になると、感染を防御しようとして産生されるサイトカイン群が異常に産生される結果、副作用として出現することによると思われます。このことは従来の感染症でも同様であり、感染が深刻になるとSARS-CoV-2に限らず出現する状態です。

要するに感染症の末期には、このような病態が出現して本来は体を守るべき免疫反応が生体に却って害を与えることに繋がってしまいます。原因は多量の感染病原体や感染により死滅した細胞などいわゆる異物であると考えられています。これがサイトカインストームを引き起こす原因となります。即ち、多量の感染病原体や感染により死滅した細胞がいろいろな個所で異常な免疫応答を誘導することが問題です。

ところで、現在はSARS-CoV-2ばかりが注目されていますが、この病態はSARS-CoV-2に限らず、インフルエンザウイルスの感染でも、2012年にヨルダンとサウジアラビアで初めて検出され、2018年初頭の時点で、2220症例の中で790人が死亡した、中東呼吸器症候群(MERS)の原因ウイルスである別種のコロナウイルスでも同様です。

さてこれらのウイルスはサイトカインストームを起こす程度が異なるのでしょうか?この点に関連して、Kenrie P Y Hui et.alらは The Lancet Published online May 7, 2020  https://-doi.org/10.1016/S2213-2600(20)30193-4 The Lancetにおいて、実際にヒトの細胞を用いて、 インフルエンザウイルス、SARS-CoV-2、MERSウイルスの細胞への感染のしやすさや、サイトカイン産生の程度などを検討した結果を発表しています。

その結果から言うと、SARS-CoV-2はインフルエンザウイルスに比べるとサイトカイン群の産生は低いようです。この結果からだけでは正確なことはまだ分かりませんが、サイトカインストームを取り上げた場合には、SARS-CoV-2よりもインフルエンザウイルスの方が危険という事を示唆しているのかも知れません。

いずれにしてもサイトカインストームは極めて重篤な感染が生じた場合に起こるので、そのような状態に陥る前に、予防や治療を行うことが大切と思われます。

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