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LPS研究紹介

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マクロファージと糖脂質の最近の話題(30)

マクロファージ移植は重症の肝硬変に効果があると期待される

以前、神経免疫学革命という書籍についてご紹介しました。その中に脊髄損傷のために下半身不随になった患者に対するマクロファージ移植療法の治験が進んでいることに触れています。

 

これまでは例えば脊髄損傷という慢性炎症状態に“炎症を引き起こす作用がある”マクロファージを移植するなどということは、状態を悪化させるだけでナンセンスだと考えられていましたが、神経免疫学革命の著者である、シュワルツは真っ向から炎症とは治癒過程を促進する必須な生理的反応である、との考えと、動物実験での成功を踏まえて、治験を進めることにしたわけです。今後慢性炎症に対しては、適切にマクロファージを移植することで良好な治療効果が認められるという、定説を覆すような発見が相次いでなされる可能性があります。その一例についてご紹介します。

肝硬変は肝臓が線維化する疾患で重症化すると肝臓を移植する以外の治療法がない病気です。肝臓がんの90%以上は肝硬変を伴っているともいわれています。厚生労働省が2018年に報告した人口動態統計の概要では、アルコール性肝硬変を除く肝硬変患者の死亡者数は8000人を超えています。肝硬変はウイルス感染等による炎症が慢性化することが原因に違いないと考えられていますから、ここでもいわゆる炎症は悪者扱いされているのです。

これに対して、スコットランド・エジンバラ大学のFrancesca Moroni,らはNature Medicine volume 25, pages1560–1565 (2019) において、9人の患者に末梢血からアフェレーシス(免疫細胞の一括採取)で集めたマクロファージを移植した治験結果を報告しました。

論文のタイトルは安全性が前面に出ていますので、治療法の第一相試験に相当すると考えられます。定説では肝硬変ではいわゆる炎症は悪ですから、脊髄損傷の場合と同様で、マクロファージを移植するなどということはもっての外なことです。治験は磁気ビーズを用いた方法で採取したマクロファージをM-CSFとともに培養して1回だけ1千万、1億、10億個静脈投与して効果を調べました。報告によればマウロファージ移植は殆ど副作用はなく安全性には問題がありませんでした。

肝硬変に対する効果については、極めて予備的な結果ですが、一定の効果が期待できそうだと著者らは報告しています。つまりマクロファージ移植治療を受けた患者では肝硬変の重症度を表す指標であるMELDスコア(MELDスコアは、ビリルビン、プロトロンビン時間、クレアチニン、透析治療の有無で計算されます。)は全ての症例でマクロファージ移植後90日で低下しました。そして、9例中7人が1年後でも治療前より低下していました。

以上のことは、マクロファージの移植療法は難治性の多くの疾患に対して新規な治療法となる可能性があります。もしそうだとするとLPSの有用性はさらに高まるとも期待され、今後の研究成果が待たれます。

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