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LPS研究紹介

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マクロファージと糖脂質の最近の話題(32)

マクロファージは肥満を予防する?

私たちはLPSの経口投与が高脂肪食を食べさせることによって起こる肥満を予防することを報告しています。何故このようなことが起こるかについては十分な解明が行われてはおらず、恐らく白色脂肪細胞組織(肥満を引き起こす脂肪細胞の集まり)に存在する組織マクロファージが関係するのではないかと考えています。

これに関連して、白色脂肪組織に存在する特殊な組織マクロファージと脂肪細胞間で、細胞間のミトコンドリア輸送を利用して、代謝の恒常性を制御する免疫代謝クロストークのメカニズムがありそうであるとの報告がありますので紹介します。

最近の研究では、ミトコンドリアを細胞間で移動させることで、代謝の低下した細胞の生存を助けることができると考えられています。しかし、このような機構が脂肪組織でも存在するか否かはこれまで分かっていませんでした。この点に関して、Department of Pathology and Immunology, Washington University School of Medicineの免疫病理学部を中心としたグループが論文を発表しました。

Cell Metabolism 33, 1–13.e1–e8, February 2, 2021 e8 Steven L. Teitelbaum Jonathan R. Brestoff,etc「Intercellular Mitochondria Transfer to Macrophages Regu-lates White Adipose Tissue Homeostasis and Is Impaired in Obesity」

この論文では、マクロファージが隣接する脂肪細胞からミトコンドリアを獲得すること、そしてこのプロセスが通常の脂肪組織に存在する組織マクロファージとは転写的に異なるマクロファージ亜集団に限られていることが明らかにされています。

さらに著者らは、このミトコンドリアの取り込みは、ヘパラン硫酸に依存していることを明らかにしています。そして、高脂肪食で肥満を誘発したマウスでは、白色脂肪組織に存在するマクロファージ上のへパラン硫酸の量が減少しており、脂肪細胞からマクロファージへのミトコンドリア移行が減少していました。

さらにマクロファージ系細胞でヘパラン硫酸を合成する遺伝子を欠損させると、白色脂肪組織からマクロファージへのミトコンドリアの取り込みが減少することがわかりました。その結果、脂肪細胞量は増加し、エネルギー消費量が減少し、高脂肪食で起こした肥満が悪化することがわかった、としています。

以上の報告から、経口投与したLPSが高脂肪食を食べさせることによって起こる肥満を予防する仕組みには、脂肪組織マクロファージが脂肪組織の恒常性を維持する機能を向上させる、という機構が働いている可能性が新たに分かってきました。

肥満はあらゆる疾患の発生母地ともいわれ、解消することが強く求められる現代病です。LPS の経口投与の肥満予防機構が明らかになることは、LPSの有用性をさらに高めることに繋がると期待されるので、今後の研究に弾みがつく報告であると考えられます。

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