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LPS研究紹介

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マクロファージと糖脂質の最近の話題(22)

皮膚に常在しているグラム陰性菌をアトピー性皮膚炎患者に移植するとアトピーが治る

健常者の糞便を細菌による難治性の腸炎患者あるいは炎症性腸疾患の患者に投与すると、難治性腸炎が治癒したり炎症性腸疾患が寛解することがあり、この効果は既存の薬剤を遥かにしのぐことが報告されて、この治療法は糞便移植法としてほぼ確立した治療法になっています。

糞便移植では健常者の糞便すなわちマイクロバイオームを含む総体を移植することから健常者の糞便に含まれる微生物が効果に関係すると考えられます。実際に糞便移植の効果の一部はLPSの経口投与によっても得られることが報告されています。

ところでLPSの経皮投与がアトピー性皮膚炎に優れた効果を発現することは既に報告されております。一方皮膚や粘膜には固有の常在菌が共生して皮膚や粘膜のバリアー機能 の一部となって例えば感染防除などに役立っています。

それでは、糞便移植と同じような考え方をしてみると皮膚の常在細菌を上手に使うことでアトピー性皮膚炎に対して有用性が認められる可能性があることになると思われます。

この点に関して、

Ian A. MylesらがJCI Insight. 2018;3(9):e120608. https://- doi.org/10.1172/jci.insight.120608.

において健常な皮膚に常在するグラム陰性菌(当然LPSを持っています。)をアトピー性患者の皮膚に移植するとアトピー性皮膚炎に著効することを報告しました。彼らは先行する研究で健常者の皮膚に常在するグラム陰性菌、Roseomonas mucosaが動物実験やアトピー性皮膚炎の細胞レベルでの実験でアトピー性皮膚炎に有効であることを見出していました。  そこで実際にヒト試験を行ってこのグラム陰性菌のアトピー性皮膚炎に対する有効性と安全性を調べました。ヒトでの最初の試験には、成人10名および小児5名の患者が登録され、オープンラベルフェーズI / II安全性および活性試験(アトピー性皮膚炎試験におけるRoseomonas mucosaの皮膚治療効能の初回評価)が行われました。

Roseomonas mucosa による治療は、アトピー性皮膚炎の疾患の重症度、疾患局所にどの程度ステロイド投与が必要となるか、および黄色ブドウ球菌の数などについて有意な減少を示しました。この治療法による有害事象または治療によって引き起こされる合併症は認められませんでした。

彼らはさらに、今後の皮膚常在菌を用いた微生物マイクロバイオームに基づく治療に影響を及ぼすと思われる細菌代謝物の皮膚局所への接触の影響について調べています。これは細菌代謝物がアトピー性皮膚炎に関連する皮膚の常在菌の構成異常に関係する可能性があると考えられるからです。

彼らは以上の結果から、今後はオープン試験ではなくプラセボ対照試験により引き続きR.mucosa療法を評価することが重要であると述べています。

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