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LPS研究紹介

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LPS研究紹介

マクロファージと糖脂質の最近の話題(16)

腸内細菌の種類によるLPSの免疫機能の違いはヒトでの自己免疫疾患の発症に影響を与える。

衛生仮説は現代の衛生環境の改善が自己免疫疾患やアレルギー疾患の発症と関係があるとするもので、2008年に大規模な疫学研究により、幼児期にグラム陰性細菌の膜成分であるLPSに多く触れたほど喘息発症のリスクが下がることが明らかにされました。つまり、衛生仮説を成立させる重要な分子の一つはLPSであり、LPSは抗アレルギー効果があることが明確に証明されました。

この報告に引き続いて、Ⅰ型糖尿病の発症や多発性硬化症の発症を含む種々の免疫疾患にも衛生仮説が成立することが証明されました。

ところで、例えばLPSを例にとってもわかるように、空気から摂取するLPSは口腔粘膜や皮膚が中心的な作用場所になりますが、一方で腸管の中にもグラム陰性菌は存在しており、この場合には主として大腸がLPSに接触する中心的な作用場所になります。

近年、腸内細菌が恒常性を維持する上で重要な機能を持つことが次々に明らかにされ、第二の脳と呼ばれる腸管は消化吸収を越えて、恒常性を維持する上で重要な生物学的意義を担うとも考えられます。この点を考えに入れると腸内細菌も衛生仮説の成立に関係すると考えても不思議はありません。

しかしこれまで腸内細菌が衛生仮説と関係することについての報告は多くはありませんでした。この点について、

atanen et al., 2016, Cell 165, 842–853

において、腸内細菌の一つであるバクテロイデスが自己免疫疾患の発症と関係することを報告しています。

彼らは自己免疫疾患の発症が多い北ヨーロッパのフィンランドとエストニアと自己免疫疾患の発症が少ないロシアの子供を対象として、生まれてから3歳までの腸内細菌の解析を行いました。そうしたところ、ロシアの子供たちにはフィンランドやエストニアの子供たちに比べてバクテロイデスが少なく、大腸菌が多いことを見出しました。

バクテロイデスはグラム陰性菌でLPSを持っています。彼らはロシア人の子供たちの腸内細菌としては大腸菌を選び、この二つの細菌のLPSの免疫活性が異なるのではないかと考えたのです。そしてバクテロイデスのLPSの構造を大腸菌のLPSの構造を比較してみたところ、LPSの活性中心であるリピドA部分の構造が大きく異なっていることを見出しました。またバクテロイデスのLPSは大腸菌のLPSとは異なって、マウスの実験でⅠ型糖 尿病の発症を防ぐ効果は認められませんでした。

以上のことから、腸内細菌のLPSはその種類によっては免疫の学習をすることに関してこれを妨げる働きを持つ場合があることを示しています。腸内細菌叢は極めて多様な種から成立していますのでこれだけでは腸内細菌の機能を説明することは難しいですが、自己免疫疾患の発症に関して、予防的に働くLPSとそうではないLPSがあることは確かなようです。

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