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LPS研究紹介

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マクロファージと糖脂質の最近の話題(25)

腸管マクロファージは乳酸などの低分子物質に反応して免疫活性を亢進させる

腸管に存在する腸内細菌は腸管のみならず、体の恒常性維持に重要な役割を果たすとされています。腸管内では多様な代謝分子が産生されますが、そのような代謝産物の中で、どのような分子がどのような影響をもたらすかについては、ごくわずかの例外を除いて不明です。

ところで腸管には組織マクロファージの一つである腸管マクロファージが存在します。この中で小腸の腸管マクロファージは腸管上皮細胞間から樹状突起を伸ばして腸管内の細菌等を取り込んで細菌に対する免疫反応を誘導しますが、その詳しい仕組みは不明でした。

この点に関連して大阪大学の梅本英司准教授、森田直樹大学院生(共に大学院医学系研究科 免疫制御学/免疫学フロンティア 研究センター)、竹田潔教授(大学院医学系研究科 免疫制御学/免疫学フロンティア研究センター/先導的学際研究 機構)らのグループは、乳酸菌等の腸内細菌が産生する乳酸・ピルビン酸が腸管マクロファージの細胞表面に 発現する受容体 GPR31 に結合し、腸管マクロファージの樹状突起の伸長を誘導することを発見しました。

この報告が
Nature 2019 年 1 月 24 日 オンライン版、 https://doi.org/10.1038/s41586-019-0884-1
で公開されているので紹介します。

解説によると、竹田教授らは、乳酸・ピルビン酸を野生型マウスに経口投与すると、小腸のマクロファージは上皮細胞間から樹状突起を伸ばし、病原性細菌のサルモネラ菌を効率よく取り込むことを見出しました。そして乳酸・ ピルビン酸の投与により、野生型マウスはサルモネラ菌に対する免疫応答が亢進して、サルモネラ菌への抵抗性が高まります。次に小腸の腸管マクロファージがこれら分子を認識する仕組みを調べてGタンパク質共役型受容体5という受容体のひとつであるGPR31に結合することを見出しました。GPR31は小腸のマクロファージに強く発現しますが、大腸や脾臓のマクロファージでは発現は認められないとのことです。そこでGPR31の遺伝子を欠損したマウスを用いると、乳酸やピルビン酸を投与しても免疫応答は見られませんでした。乳酸・ピルビン酸が生理活性分子として腸管マクロファージに作用することを見出した本研究は、腸内細菌と腸管マクロファージの相互作用を理解するうえで大きな意義を持ちます。

この免疫応答は局所で働く機構ですが、LPSは腸管マクロファージを活性化して、このシグナルが全身に働きかけて、LPSの優れた機能の発現に繋がるのではないかと私たちは考えています。腸管マクロファージが腸管内の低分子物質をサンプリングする仕組みが解明されたことは、LPSの効果発現機構の解明にも大きなインパクトを与えると考えています。

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