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LPS研究紹介

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LPS研究紹介

マクロファージと糖脂質の最近の話題(20)

Toll like 受容体からの刺激(例えばLPS)は脳の神経幹細胞の分化や分裂を制御する

LPSの受容体であるTLR4が脳のマイクログリアに働いてアルツハイマー病を予防することは既に報告がされており、この働きが脳のマクロファージであるマイクログリアの貪食能を高めアミロイドβ蓄積を予防することによることも報告されております。それ故、TLR4に作動薬(例えばLPS)として働く物質はこれまでの薬剤にない新しいメカニズムを持つアルツハイマー予防薬として有用性がある可能性が指摘されています。

他方、脳には1000億個を超す神経細胞が存在するとされておりますが、脳神経細胞は神経幹細胞から分裂・分化して脳神経の障害を修復すると考えられています。この神経幹細胞の分裂や分化をTLR4からのシグナルが制御することが分かっていました。しかしどのように関わっているかはまだ明らかにされていませんでした。この点に関してChiara Grasseliらが Cell Death and Disease (2018) 20189:280 DOI 10.1038/s41419-017-0139-8 において神経幹細胞の分裂や分化にどのようにTLR4からのシグナルが関わるかを調べました。

彼らは、ヒト胎児脳の終脳領域に由来し試験管内で神経塊に培養したヒト神経幹細胞を用いてTLR4の役割を解析しました。このようにして得られた神経塊は最近になって筋委縮性側索硬化症の患者に対して臨床試験に用いられているものです。

まず著者らは神経幹細胞にはTLR2やTLR4がLPSの働きに必要な共同受容体であるCD14やMD-2と同様に発現していることを見出しました。LPSを用いてTLR4からのシグナルを活性化すると神経幹細胞の分裂や分化に対して正の効果を示しました。しかしTLR4からのシグナルを合成したTLR4阻害剤で抑制すると正反対の効果を示しました。またTLR4の刺激は神経細胞やオリゴデンドロサイトへの分裂や分化、そして生存を促 進しましたが、TLR4を阻害すると細胞死を増加させることが分かりました。

この事実と一致して筋委縮性側索硬化症のラットや免疫不全マウスに移植後に生存しているヒト神経幹細胞では内因性のTLR4の発現が保持されていることもわかりました。このTLR4の発現等は神経の炎症環境とは無関係なものです。

TLR4より下流の細胞内情報伝達機構を調べたところ、インフラマゾームの経路のあるものが活性化されていることが示唆されました。  以上の研究から著者らはTLR4からの刺激はヒト神経幹細胞の再生にとって必要不可欠であることが示唆されるとしています。そしてこのことはTLR4からのシグナル伝達機構は神経新生機構を究明する上で新規な標的であるとしています。

脳内には大きくいって神経細胞とグリア細胞が存在します。またマイクログリアも重要な細胞です。TLR4からの刺激が脳内の主要な細胞にとって重要な役割を果たすことを示したこの研究は、LPSは脳機能維持に極めて重要な役割を演じる可能性のあることをうかがわせる内容であると思われます。

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