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LPS研究紹介

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マクロファージと糖脂質の最近の話題(33)

LPS経口投与が肥満を予防するメカニズムに関連する話題

先回の記事で、白色脂肪組織に存在する特殊な組織マクロファージと脂肪細胞により、細胞間のミトコンドリア輸送を利用して、代謝の恒常性を制御するメカニズムがありそうで、肥満予防にも関係していることを示唆する論文を紹介しました。

この論文ではLPSについては直接触れられておりませんでした。そこで、先回の記事では、この論文で報告された発見と、私たちが見出したLPSの経口摂取により高脂肪食によって起こる肥満が予防できるという事実を併せて考えるとLPSは脂肪組織の特殊なマクロファージの活性を制御して肥満予防に働く可能性があると考えてみたわけです。

もし以上の仮説が正しければ、LPS経口摂取→何らかのサイトカイン分泌→脂肪組織の特殊なマクロファージの活性制御→何らかのサイトカイン分泌→肥満の予防、というメカニズムが存在していることが分かります。そこでこれに関連する論文がないかどうかを調べてみました。そうしたところ、少し前の報告になりますが、

Graduate School of Medicine, The University of Tokyo, Tokyo,(東京大学)の 糖尿病、代謝病部門を中心としたグループがToda et al. ,Molecular Cell 79, 1–11 July 2, 2020 に以下の題名で論文を発表していました。

「Insulin- and Lipopolysaccharide-Mediated Signaling in Adipose Tissue Macrophages Regulates Postprandial Glycemia through Akt-mTOR Activation」

この論文の要点のひとつは、インスリンや経口的摂取による生理的濃度のLPSで誘導されたマクロファージ由来のインターロイキン-10(IL-10)が、インスリンと協調して肝臓のグルコース産生を抑制すること、そしてこのプロセスの障害が肥満におけるインスリン抵抗性の発症に寄与していることを明らかにしたことにあります。

つまり、経口摂取(この論文ではLPSは腸内細菌由来としている)したLPSは私たちが主張するように炎症の誘導に関わっているのではなく炎症の抑制に関わっており、これにはマクロファージが産生するIL10がかかわっているということになります。そうしますと先ほど下線でしました作業仮説において、サイトカインが仲介すると考えたサイトカインがIL10であることが強く示唆されることになります。ただし、IL10が脂肪組織の特殊なマクロファージから産生されるのか、またLPSと脂肪組織の特殊なマクロファージを結びつけるサイトカインは何か、という点に関しては未解明のままです。

肥満は代謝の異常と密接にかかわっています。ですから、肥満を予防するためには脂肪組織の制御は勿論のこと、肝臓を主とした代謝機構の関与も重要になるに違いありません。以上より、LPSの経口摂取が肥満予防に働く機構も以上の二つの側面から捉えることで解明される可能性があります。

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