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LPS研究紹介

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マクロファージと糖脂質の最近の話題(14)

パントエア・アグロメランスは不思議な微生物である。その有用な作用について。

私たちのグループでは、長年に渡り植物共生菌であるパントエア属菌に着目して、とりわけパントエア属菌の一つであるパントエア・アグロメランスの糖脂質(LPS)が種々の疾患を予防すること発見し、健康増進に有用であることのメカニズムの解明や、それらの機能を活用した健康維持戦略を進めてきています。

パントエア属は約25年前に属として認知された比較的新しい属ですが、現在では20種以上の種を含む相当幅の広い属であることが分かってきています。パントエア・アグロメランスはその中の一つの種ですが、近年パントエア・アグロメランスが果たしている機能が明らかになるに従い、その多様な機能に注目が集まるようになってきています。

パントエア・アグロメランスの様々な機能についてまとめた総説がありますので紹介します。

Dutkiewicz J et al. Ann Agric Environ Med. 2016 Jun 2;23(2):206-222

この中には私どもが取り扱っているパントエア・アグロメランスのLPSがLPSpあるいはIP-PA1として紹介されており、既に皆様が良くご存じの有用性が述べられています。

著者らは、ことに大事な点としてLPSpは経口・経皮投与でマクロファージの活性化を通じて恒常性維持に寄与することを挙げています。

パントエア・アグロメランス自身は食品保存のために使用可能なマイクロシン他多様な抗生物質を産生します。また、パントエア・アグロメランスは広く植物だけでなく昆虫、例えばマラリアを媒介する蚊にも共生しています。それ故著者らはパントエア・アグロメランスに抗マラリア因子を産生させるように遺伝子改変を加えて蚊に共生させることで、WHOが三大感染症とするマラリアの駆逐に有望なバイオ薬剤となる可能性があるとしています。

また別の観点から著者らはパントエア・アグロメランスは土壌に植物が利用できる形でリン酸化合物や窒素化合物を提供できるので、化学肥料に替わる環境に優しい有用微生物として理想的な候補菌である、と述べています。

また、パントエア属のあるものは土壌に存在する有毒な化学物質や石油に由来する炭化水素や毒性の高い金属なども分解できるとして、土壌改良や環境保護にも有用であるとしています。またパントエア・アグロメランスは産業廃棄物から水素を生産する能力もあるので、安価なエネルギー産生に活用できる可能性についても述べています。

結びに、著者らは、パントエアをジキルとハイドの小説にたとえ、パントエアはハイド(善人)のイメージがどんどん膨らんでいることを述べて、パントエア・アグロメランスは日和見感染等の原因となることはあるにしても、健康増進やQOL維持に貢献することが期待されるバイオテクノロジーの分野で潜在的な大きな価値を持つ微生物であるとしています。

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